時報俳壇(11月23日号)- ふじもとよしこ選
天高しをやの声受く秋大祭
箕面市 志賀道雄
松茸やそえ文までも香を濃くし
秋田市 高橋重雄
名月の神苑照らす旬の声
吹田市 楓芳雄
月一度子へ書く便り小鳥来る
札幌市 田森つとむ
桐一葉さずけ合ふ日々二人きり
京都市 西加代子
烏城描く墨に五彩や竹の春
天理市 山田実
石ければ音のかそけし草の花
豊川市 菊地美智代
虫一夜定めの生をひたに鳴く
天理市 北おさむ
天高し諭達を拝す心して
岩手県 高屋敷節子
一年を明らかにして彼岸花
門真市 傳石敏治
身に沁むや朝の急須の茶の揺らぎ
近江八幡市 若林白扇
琵琶の音の深き愁ひや月今宵
大津市 平井紀夫
みかぐらの調べに舞うや秋茜
和歌山市 西澤喜久治
ぶるぶると土を散らして落花生
東京都 吉田柳哲
価値観の一変したる敗戦忌
横浜市 番家達也
縁側をいつ飛び立つか赤とんぼ
東京都 金子ひろみ
秋空を眺めて感謝里暮し
いなべ市 筒井みつ江
漁火の消えたる海に遅の月
福岡市 鎌田秀徳
梨を剥く間の会話滴るる
市川市 小松富子
若衆の陽気ておどり爽やかに
飯田市 本島美紀
晴れぶたい山粧いて紅もひき
小樽市 佐藤和子
にをいがけあらきとうりょう鰯雲
宇治市 原清彦
傘寿の夫地場へ日帰り秋うらら
町田市 鯉渕洋子
めざめれば窓枠中の木々の秋
広島市 大村佳光
電話越にまで聞こゆる虫の秋
茨木市 長宗信爾
大祭に秋めく木々や友三人
北九州市 石井喜代美
山里や柿豊作の猿むるる
田辺市 石田安子
選者詠
望の月生れし海峡波しづか
【評】
志賀さん
「諭達第四号」発布に当たり、真柱様のお言葉を聞かせていただいた秋季大祭でした。この佳き日の季語として「天高し」が生きています。
高橋さん
松茸は芳香が高く風味が優れていて珍重されます。そえ文にまで濃き香が。作者は顎が落ちたかもしれません。
楓さん
中秋の月光が神苑に澄み渡っています。旬の声とは虫の声。そして作者にとっては、諭達発布の時旬の声だったのかもしれません。
次回は、12月5日までの到着分から選句。投稿は新年に関する俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
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