初代の志を受け継ぐ者 – 視点
2023・9/6を見る
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大手中古車販売会社による保険金不正請求等の不祥事が報じられている。同社は、前社長と前副社長が親子という同族企業である。会社の私物化が指摘されたり、甘やかされた「二世経営者」などと揶揄されたりすることもある同族企業だが、近年はその長所に目を向けた研究もある。
日本の同族企業は、上場企業の過半数、中小企業のほぼすべてを占めている。また、同族企業と非同族企業を比較した場合、前者のほうが業績が良いというデータもある(『日経ビジネス』2019年6月10日号)。
さらに、帝国データバンクによれば、いわゆる老舗企業の代表者は、同族継承(世襲)による就任が8割近くに上り、それが経営の安定につながっているという。
こう見ると、同族経営や家族間の事業継承が必ずしも悪いわけではない。件の不祥事は他山の石とすべき事例だが、範となる企業も多い。その一つがトヨタ自動車である。
現会長の豊田章男氏が入社を決心したとき、当時の社長、父・章一郎氏は「おまえの上司になりたいやつはいない」が、それでも入社するならば特別扱いはしないと戒めた。また、社長就任後には、リコール問題で米国の公聴会に召喚され、会社存亡の危機に瀕するが、生放送のテレビトーク番組の最後を「私は車が大好きです」との言葉で締めくくり、バッシングの潮目を変えた。このように、創業家の者でも特別扱いされない厳しさや製品への強い愛情があったからこそ、日本初の売上高30兆円超の巨大企業へと成長を遂げたのだ。
ところで、本教の信仰は、親から子、子から孫へと引き継がれて末代の道となることが理想とされている。現在、道の先達を自覚する者の多くは、代を重ねた信仰者であろう。事業の継承と信仰の継承を同一視することはできないが、初代の志を受け継ぐ者は、親々の伏せ込みと徳の上にあぐらをかくことは、あってはならない。年祭へ向かうこの旬に、誰よりも教祖を慕う気持ちでひながたをたどり、一層の成人をさせていただかねばと肝に銘じたい。
(三濱)