「棚田遺産」認定に教友2氏が尽力 – 話題を追って
2023・9/13を見る
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福井県美浜町の若野繁晴さん(73歳・須可麻分教会ようぼく)と榎本強さん(72歳・同)は長年、同町菅浜の棚田の保全・振興活動に力を尽くしてきた。こうしたなか昨年3月、菅浜の棚田が農林水産省の認定する「つなぐ棚田遺産――ふるさとの誇りを未来へ」に選ばれた。
「棚田遺産」は、棚田の振興と活性化を目的とする優れた取り組みを評価するもの。現在、全国271カ所が認定を受けている。
傾斜地に美しい棚田の風景が広がる菅浜は、他府県からも観光客が訪れる景勝地。約27ヘクタールの棚田は、地元農家で組織される「菅浜棚田協議会」と住民が連携しながら、除草や山林整備などの保全活動に努めている。
一方で、近年は地元食材の活用や住みやすい街づくりなどの地域振興事業でも注目を集め、休耕田を活用した「はーぶ&れもん園」の開設や、棚田米や地元で採れた農作物を食べるイベントの開催など、住民たちが地域性を生かした事業を精力的に展開している。
信仰実践も欠かさず
若野さんと榎本さんは、「菅浜棚田協議会」の活動と地域振興事業に携わってきた。
地元出身の若野さんは約20年前、放棄された棚田が年々増加していることに気づき、「地元の財産である棚田の風景を守りたい」と、仕事を辞めて専業農家の道へ。知識や経験がないなか、棚田を借り受け、知り合いの農家の協力を仰ぎながら、独自に復田を進めた。
その後、若野さんの考えに同調する人々が次第に増え、やがて県内有数の棚田地域に生まれ変わると、平成30年、農林水産省の定める「指定棚田地域」に認定された。
現在、約12ヘクタールの棚田を管理する若野さんは「菅浜棚田協議会」の会長として保全に努めている。
一方、榎本さんは棚田の休耕地を活用した地域振興に力を注いできた。
数年前、榎本さんは「町の魅力を伝えるために、何か力になりたい」と、地域住民による企画推進組織の代表に就任。手始めに、私費を投じて農具やビニールハウスを購入し、休耕地の開墾・耕作を進めた。
その後、榎本さんを中心とする地域住民の地道な活動が認められ、美浜町の助成を受けることに。こうして令和元年、棚田地域の振興に携わる地元住民によって「菅浜わくわく協働体」が発足した。
現在、同協働体の副代表を務める榎本さん。「はーぶ&れもん園」の管理のほか、炭焼き小屋や地元食材を使ったピザ店の運営などを手がけている。
榎本さんの先祖は、『稿本天理教教祖伝逸話篇』42「人を救けたら」に登場する榎本栄治郎で、代々の信仰を重ねている。地域振興に尽力する傍ら、信仰実践も欠かさず、若野さんらと共に所属教会に日参し、朝づとめ前には神殿掃除と献饌をつとめる。また毎月、地域の教友たちと共に、神名流しやリーフレット配りに励んでいる。
若野さんは、このたびの認定を受け、「故郷の緑を守る活動が、天理教を知ってもらう機会にもなった」と。榎本さんは「菅浜の魅力を広くピーアールして、若い人の住む活気ある場所にしたいと努めてきた。これからもひのきしんの精神で、菅浜の振興に力を尽くしたい」と語った。
(越乃國大・上田社友情報提供)