【AI音声対象記事】
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八ッ やまとハほうねんや
みかぐらうた 一下り目
心地よい秋風が、稲穂をさわさわと揺らしています。あまり話題に上りませんが、米は「食欲の秋」を象徴する食べ物ではないでしょうか。当地でも五穀豊穣の祈りをルーツとする秋祭りが行われ、早朝から太鼓が鳴り響きました。
祭りでは日中、4トンもある地車が青年団らに引かれて街中を駆け巡ります。なかでも前後の梃子を巧みに操り、交差点を直角に走り抜けるのが一番の見せ場。成功するたびに歓声が湧き起こります。
また、夜になれば一転、200個もの提灯を吊り下げて幻想的な雰囲気に。今度は子供たちが小さな手で綱を握り、大きな地車をゆっくりと動かしていきます。いまはどうか分かりませんが、筆者が幼いころは最後までついて行くと、梨を一つ、もらえました。素朴な秋の味覚がいつまでも記憶に残っているのは、祭りの夜という非日常のスパイスが効いていたからでしょうか。
一方で、日常は同じことの繰り返しが多く、どこか停滞しているようにも感じてしまいます。しかし実は、夜の地車のように少しずつ前へ進んでいることに気づくとき、そこに大勢の「引き手」の姿を見いだすことができるでしょう。
身近な人々への感謝の心を忘れなければ、あきのこない日々を楽しめる。これが実り多き人生になる秘訣かもしれません。
(大塚)