地域の秋祭りに関わって – 道を楽しむ14
2023・10/18号を見る
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厳しかった残暑も過ぎ去り、季節は秋。いまや全国各地で秋祭りがたけなわであろう。地元・岩手県花巻市でも、400年の伝統を誇る「花巻まつり」が開催され、町内ごとに作られた12台の風流山車が市内を練り歩く。
私の住む町内でも例年、山車が参加している。祭りの前夜、期間中の安全運行を願う「安全運行祈願祭」を、15年前から私が祭主となって勤めている。もちろん天理教式で執り行うのだが、祭りに関わる町内の関係者など、年によっては100人近く集まる。親神様を拝し、一同そろって四拍手する姿を見ると、毎年のことながら感無量である。
この地域は戦時中に大空襲に遭い、多くの命が失われ、駅前には慰霊の像が立っている。実は以前から、町内で自ら命を絶つ事例が目立っており、空襲との霊的な関わりを囁く声は少なくなかった。そして15年前、祭りの大きな役を担う方が、その準備期間中に自ら命を絶つという衝撃的な出来事が起きた。これに大きなショックを受けた住民たちが相談した結果、「なんとかしてほしい」と私に依頼が来た。霊様をお慰めできるかどうかはさておき、この地域をお守りいただくようにお願いする旨を説明して了承いただき、以来、私が祭りの前夜に、山車の安全運行とともに、地域の平穏無事を祈念することになった。
このように地域から依頼があったのも、日ごろ町内行事に積極的に参加し、祭りでは準備から当日の山車の運行まで家族で協力した積み重ねによるものと実感している。やはり地域と密接なつながりを持つことは、いまの時代、身近な「にをいがけ・おたすけ」につないでゆく大切な姿勢ではないだろうか。
教祖は「山の仙人」ではなく、「里の仙人」になるのや、と仰せられたという。里の仙人とは、社会の一員として暮らしながら、親神様の教えを進んで実践し、人々の手本となるような生き方を指すと教えられる。そんな里の仙人の姿に、少しでも近づきたいと念願している。
ありがたいことに、ここ15年、自ら命を絶つ人はいない。
中田祥浩 花巻分教会長