「雅楽」が日独友好と文化交流の架け橋に – 天理日独文化工房
2023・10/18号を見る
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ケルン雅楽アンサンブル 天理で演奏会
ドイツ・ケルン大学を拠点に活動する「ケルン雅楽アンサンブル」の一行10人が来訪し、天理市文化センターで開かれた「雅楽フェスティバル in 天理」(天理大学主催)に出演した。今回の来日は、河原町大教会(深谷善太郎会長)が文化交流を目的に2006年、ケルンに設立した公益社団法人「天理日独文化工房」(志水美郎事務局長)の引率によるもの。京都市で催された記念行事に参加したほか、天理大学地域文化学科でドイツ語を学ぶ学生たちと交流。そして、9月の本部月次祭に参拝した。
ドイツ有数の伝統と規模を誇るケルン大学に、欧州初の雅楽団体が誕生したのは23年前。ケルン大学名誉教授で民族音楽研究者のロベルト・ギュンター氏(故人)がハワイ大学に客員教授として招かれた際に、ハワイ大学で雅楽を指導していた社本正登司氏(故人・マリエ布教所長)と出会った。雅楽の魅力に惹かれたギュンター氏は、ケルン大学に雅楽コースを開講するべく社本氏を招聘。さらに、天理大学雅楽部OBで当時ドイツ・マールブルク大学に留学予定だった志水さん(57歳・ケルン布教所長)をアシスタントに迎えた。その後、現地学生と共にケルンにある日本文化会館での雅楽演奏会を成功させたことをきっかけに、2000年「ケルン雅楽アンサンブル」が発足した。
以後、志水さんが学生を毎週指導。天理日独文化工房が設立されてからは、河原町大教会が同大教会雅楽部「雅韻会」のメンバーを派遣し、指導などを通じて交流を深めてきた。
今回の来日は、京都市とケルン市の姉妹都市提携60周年の節目に両市の友好関係を強めること、さらに学術交流協定を締結している天理大学とケルン大学の交流を一層深めることなどを目的とするもの。ケルン独日協会、在日ドイツ総領事館などの協力のもと、天理市や京都市での演奏会や交流会の機会が持たれた。
また、志水さんの「教祖の教えにふれる機会を」との思いから、河原町大教会の月次祭参拝、本部神殿案内、9月の本部月次祭参拝がプログラムに組み込まれた。
国際交流の輪広げて
9月16日に来日した一行は、翌日から京都市の河原町大教会で雅楽の指導を受け、22日の月次祭に参拝。翌日、親里に到着すると、永尾比奈夫・天理大学学長を表敬訪問し、ケルン大学の学長から預かった親書を手渡した。
24日に行われた「雅楽フェスティバル in 天理」には、ケルン雅楽アンサンブルのメンバーが、天理大学雅楽部と同部OBで構成されるおやさと雅楽会と共に出演。管絃の平調『越殿楽』、舞楽『五常楽急』などを披露し、催馬楽『越殿楽今様』では二人の女性メンバーが社本氏考案の巫女舞を演じた。
プログラムの最後は河原町雅韻会との『抜頭(右方)』で締めくくり、会場から盛大な拍手が送られた。
今年4月に友人の誘いで雅楽を始めたばかりというレイハナ・ボーデンシュタインさん(24歳)は「大勢の前で演奏するのは緊張したが、雅楽をよく知る方々に練習の成果を見てもらうことができて良かった。ドイツに戻ってからも日本で学んだことを忘れず、雅楽の技術向上を目指したい」と話した。
翌25日、天理大学地域文化学科でドイツ語を学ぶ学生たちとの交流会が持たれた。
そして26日、一行は志水さんの神殿案内を受けた後、本部月次祭に参拝。さらに27日からは、京都市とケルン市の姉妹都市提携60周年を記念する演奏会などに出演した。
アンサンブルの結成当初から23年間にわたって活動しているオリバー・リヒタースさん(47歳)は「天理の方々が温かく迎え入れてくださり、感謝している。雅楽が音楽文化として深く根づくこの国で、多くの楽人仲間と共に雅楽を演奏し、交流を持てたことは、私にとって大きな宝物になった」と語った。
志水さんは「来日の目的を十分に果たせたことはもちろんだが、アンサンブルのメンバーをおぢばにお連れできたことが何よりうれしかった。学生たちも、高いスキルと情熱を持つ天理の雅楽仲間との演奏を通じて多くの刺激を受けたようだ。中国やベトナム、日本などアジアの各国に独自の形態が存在する雅楽は、その“多様性”に魅力がある。これからも雅楽を通じて、国際交流の輪を一層広げていきたい」と話した。
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