恩返しは連鎖していく – 日本史コンシェルジュ
2024・1/24号を見る
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能登半島地震で被災された皆さまに、心からお見舞いを申し上げます。新しい年を迎え、ご家族で新春を寿いでいた矢先に、まさかあのような大きな地震に見舞われるとは、誰が想像したでしょう。
被災された皆さまに、一日も早く日常が戻るよう、心からお祈りいたします。
日本に何か大きな災害が起こるたびに、温かい支援を贈ってくれる台湾。台湾衛生福利部(保健省)の発表によると、今回の能登半島地震に際しても、受付開始から5日間で、市民からの寄付金が、日本円で11億8千200万円を超えたそうです(1月11日現在)。
衛生福利部は1月4日午後、日本政府に対して6千万円の寄付を表明し、同時に市民からの寄付を受け付ける特別口座を作ると告知していました。関係者によると、コンビニや郵便局が数時間でシステムを構築し、5日の午前0時から市民の寄付の受付を始めたということです。
台湾からは、東日本大震災のときも250億円を超える義援金、400トン以上の支援物資という、世界一の支援が届けられました。そして忘れてはならないのが、2016年の熊本地震に対する支援です。
その年の1月、台湾の総統選で民進党が勝利し、政権交代が決まると、その結果に怒った中国政府は、本土からの台湾旅行を制限しました。ビジネス客の多い台北はそれほど大きな影響は受けなかったのですが、観光業が中心の南部の町は大変なダメージを受け、自分たちが支援してほしいくらいの状況だったと思います。
そんななか、4月に熊本地震が起こると、台南市長は「熊本の人たちを放ってはおけない」と1カ月分の報酬を返上し、熊本へ寄付。その「熊本のために……」という思いは、台中や高雄の市長も動かし、彼らも1カ月分の報酬を返上して熊本へ寄付したのです。その後、台湾の一般市民からも温かい支援が相次ぎました。
「熊本のために」と、最初に声をあげ、ムーブメントを起こしたのは、当時の台南市長・頼清徳氏。そうです、1月13日の台湾総統選挙で勝利した人物です。
台湾の総統選挙は、日本ではあまり大きく報じられませんでしたが、台湾の次期リーダーが台日の絆をこれほど大切にしていること、そして台湾と日本は、自然災害が起こるたびに助け合い、その恩返しの連鎖が友好の絆を紡いできたことを、多くの日本人に知ってほしいと思います。
白駒妃登美