その踏ん張りを支える力添え – 視点
2024・2/21号を見る
【AI音声対象記事】
スタンダードプランで視聴できます。
能登半島地震から1カ月半が過ぎたが、いまだに復興への見通しは立っていない。被災者の苦難と苦悩、将来への不安は計り知れず、なおも彼の地から心を離さず祈りたい。
阪神・淡路大震災以降、大規模な自然災害に見舞われた人々のメンタルケアが問われるようになった。災害ストレスの研究によると、直後の混乱状態から少し時間が経過したころ、「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)が表れ、その症状は被災者の5~10%に認められるという。代表的な症状に、思い出したくない出来事を思い出してしまう、悪夢を伴う不眠、または音などに過敏に反応してしまう、その出来事を考えることを避けたり、喜怒哀楽の感情が麻痺したりする――の三つがあり、うつ病やパニック障害を併発する場合も多い。
また、被災者だけでなく、救援者にもPTSDを発症するリスクがある。なかでも、生死を分ける現場に直面したり、長期にわたって活動に従事したりした人に、より高い発症率が見られるという。
とはいえ、被災者の生活環境が次第に整うにつれ、9割方は落ち着きを取り戻していく。なかには、人生の危機を経験したことで、何らかの肯定的な心の変容がもたらされるという最新の研究報告がある。これは「心的外傷後成長」(PTG)と呼ばれ、“逆境後の成長”を意味する。
東日本大震災から5年後の2016年、被災した福島県民2千人を対象にPTG調査が行われた。その結果から、次のような心的変化が少なからず生じていることが分かった。「他者との関係」(家族や友人との関係、地域の結びつきを実感)、「視野の広がり」(新たな行動を起こすような価値観の変容)、「人間としての強さ」(柔軟性、寛大さ、精神的タフネス等を自覚)、「精神的変容」(精神的・宗教的な成長を経験)、「人生への感謝」(当たり前と思っていた生活や人生への感謝の念)など(第69巻「日本公衆衛生雑誌」第2号、2022年)。
こうした研究は2000年代に本格化したばかりで、知見の蓄積は十分ではない。しかしながら、人が深刻な困難に向き合い、それを“意味ある経験”として認知できたとき、信念や行動が再構成されるのだという。私たちの教え「節から芽が出る」の一端を示す学説といえようか。
「もうあかんかいなあ/\というは、ふしという。精神定めて、しっかり踏ん張りてくれ。踏ん張りて働くは天の理である、と、これ諭し置こう」
おさしづ明治37年8月23日
もとより、その踏ん張りを支える兄弟姉妹の力添えも、誠の親は期待されていると思う。
(松本)