冬暁に身を引き締めて お言葉を人生の羅針盤に – 逸話の季
2025・1/29号を見る
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新年を迎えて、すでに数週間が過ぎました。このわずかな期間にも、世界の情勢は目まぐるしく変化しています。紛争の続く地域や災害に見舞われた場所などでは、この間に起きた出来事が、ある人の人生を大きく左右することもあるでしょう。
32年前のアメリカ大統領の就任式の日、留学中の筆者は子供を亡くすという人生の節目を経験しました。ニュース画面で新たな大統領就任式の映像を見ていると、あの日に夫婦で勤めた夕づとめの光景が脳裏によみがえってきます。
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明治2年の正月、教祖は「おふでさき」の御執筆をはじめられました。『稿本天理教教祖伝逸話篇』には、次のような教祖のお言葉が伝えられています。「あのふでさきも、一号から十七号まで直きに出来たのやない。神様は、『書いたものは、豆腐屋の通い見てもいかんで』と、仰っしゃって、耳へ聞かして下されましたのや。何んでやなあ、と思いましたら、神様は、『筆、筆、筆を執れ』と、仰っしゃりました。七十二才の正月に、初めて筆執りました。そして、筆持つと手がひとり動きました。天から、神様がしましたのや」(「二二 おふでさき御執筆」)
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明治2年の正月は、前年の鳥羽・伏見の戦いからはじまる戊辰戦争の大勢がほぼ決する中で、東京への奠都に続いて一部の版籍奉還がはじまるなど、明治維新による政治・社会・文化のあらゆる面における変革の結節点となる時期でした。まったく新しい時代の訪れを告げる鐘の音が、大和の村里にも響き渡るこのときに、月日のやしろである教祖の筆を通して、この世界の真実が書き記されることになったのです。
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「天から、神様がしましたのや」と仰せられるように、親神様の思召を直接に書き記した「おふでさき」には、どのような場面においても人生の問いに答え、明日への希望を与えてくれるお言葉が凝縮されています。先行き不透明な時代ですが、人生の羅針盤となるお言葉を頼りにしながら、今年も一日一日を歩んでいきたいものです。
■ 文=岡田正彦