おやのことば・おやのこころ(2021年11月17日号)
神の話は見えん先に言うのが神の話や、をやの話や。さあ/\この話の理を忘れんよう。
「おさしづ」明治21年8月9日
先日、東日本大震災から10年ぶりに宮城県の気仙沼を訪れ、当時のさまざまなことが蘇りました。震災直後の市街地は夜になると本当に真っ暗で、町が消えた跡の深い闇に立ちつくしたことも思い出しました。
当時、壊滅的な被害のあった小さな漁村で、偶然に出会ったお婆さんが「この村で津波で死んだ者は一人もおらん」と言われました。子供のころに「津波が起きたら命てんでんこだ」と教えられたそうです。「命てんでんこ」とは、津波被害が多い三陸地方の言い伝えで「津波が起きたら家族が一緒にいなくても気にせず、てんでばらばらに高所に逃げ、まずは自分の命を守れ」という意味だそうです。お婆さんは「80年生きてきて、(この村では)そんなことは一度もなかった。けれど、今度は皆それを守ってたすかった」と、凪いだ海を見ながら話してくださいました。
私たちの信仰にも、こういうことがあると思います。子供のころから教えを聞かせていただいてきて、50年60年、命にかかわるようなことは一度もなかった、と思っていても、明日がその日であるかもしれないのです。
「うるさいと思うても、聞いておけ。聞いたことは、まさかの時に思い出すこともある。聞いてないことを思い出すことはない」と、若いころに親からよく言われました。そのとき納得できても、できなくても、聞かせておくことが大切ということでしょう。
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