先を楽しみに今できることを – 視点
新型コロナウイルス感染が世界中に拡大して2年ほど経つなか、多くの会社・企業が業績を落としている。
トヨタ自動車は今年5月、2021年3月期の連結業績が、売上高で前年比19.8パーセント減の24兆円、営業利益で79.5パーセント減の5千億円になりそうだと発表した。営利事業である限り、その営利を伸ばす目標からすると、「成功」というより「失敗」という評価が妥当かと思われる。
しかし、これで意気消沈しないのが“世界のトヨタ”たるゆえんである。社長である豊田章男氏は、他業種やサプライヤー(仕入れ先)と手を携えるプロジェクトを展開。「彼らと力を合わせていけば、私たちは自動車会社からモビリティカンパニーへ変革できる」と、このピンチをチャンスに変えるべく“次”への取り組みを加速させている。
その後、2021年9月中間連結決算では、すでに営業利益が5千199億円となるなど、5月の想定を大きく上回る勢いで回復している。
ここに、「成功」や「失敗」とは異なる三つ目の尺度があると思う。失敗から学びを得、さらなる向上を図る――。この尺度をもとに、未来に向けて再起する力、弾力性に富む回復力をもって、粘り強く取り組む。近視眼的な期待度よりも、さらに先を見据えて挑戦していくのだ。
教祖は「先を楽しめ」と仰せられた。また「節から芽が出る」とも教えられている。しかし、ただ待っていればいいわけではない。案じる必要はないが、将来の芽を出すために、今できることを考えて行動する。その心の切り替えこそが、先の楽しみにつながる鍵だと思う。
おさしづに「楽しみは日々の心と言う」(明治26年6月3日)とある。心一つで明るく前向きに取り組み、失敗しても一喜一憂せず、新しい年に向けて、人のために役立つ言動に注力したい。
(永尾)