「苗代の理」の理合いを味わい – おやさと瑞穂の記 その2
おやしきの北東には、教祖ご在世当時の風景を彷彿させる自然豊かな田園風景が広がっている。ここでは毎年、親神様にお供えするお米が、昔ながらの方法で栽培されている。第2回では、「苗代」づくりの様子を紹介する。
4月16日、おぢばでは夕づとめ後に「はえでづとめ」が勤められた。おつとめには、今年の稲作に使われる種籾がお供えされ、これをお下げいただいて、おやさとのお米作りはスタートする。
当日は、教会本部管財部の担当者・森本孝一さん(54歳)ら勤務者も一緒に参拝し、稲の良き芽生えと、その後の稲作が順調にご守護いただけるように祈願した。
およそどんな農作も種をまいて苗を作ることから始まる。稲作では、この苗を育てる場所のことを昔から「苗代」と呼んでいる。もともと「代」という語には、「水田として開かれた湿地」という意味がある。
親神様の教えでは、「いざなみのみこと」の守護の理として「女雛型・苗代の理」と教えられ、苗代は信仰的にも重要な意味を持つ。田植えが機械化された現代農業では、「育苗箱」を用いるのがほとんどだが、ここでは昔ながらの方法が採られている。この苗代づくりについて、森本さんから説明を聞いた。
「苗代づくりの準備として、まず荒田をトラクターで耕して2週間くらい置き、川から水を引き込んで、畔の土をこねて『畔塗』という防水作業をします。その後、代かきをして、また2週間ほど置いてから、種をまく場所である畝を作ります」
「代かき」は、固まっている土を水でこねて柔らかい土にする大事な作業だ。
「だいたい長さ20メートル、幅1メートル60センチくらいの畝を五つ作ります。その畝の上面を、トンボとかローラーなどの道具で平らに均して、そこに種をまきます」
苗代では、まず真っ平らな地にするのが大切なポイントだという。「ひと晩水に浸けておいた種籾を1畝に約3升分ずつ手で直にまいて、その上に、籾殻で作った燻炭と堆肥を混ぜたものをかけて種籾を隠します。その上に不織布のシートを被せます。これは保温や、鳥から守るためです。1週間もすると小さな芽が出てくるので、その芽を大切に育てていきます」
燻炭と堆肥には、生育に必要な微量の養分が含まれている。このように、丁寧に保温や保護を施す様子は、なるほど母親の胎内で育まれる胎児のようで、「女雛型・苗代の理」と教えられる理合いが分かる気がした。そして、どうか皆、無事に育ってほしいと祈る気持ちになった。
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苗代の準備がひと通り整った4月30日、種まきが行われた。この日は、天理教語学院おやさとふせこみ科の海外留学生がひのきしんに駆けつけ、種まきを手伝った。天理教語学院では、実習として田植えと稲刈りを20年前から実施しているが、苗代づくりは今回3回目。参加した留学生からは「いつも食べているお米が作られる過程を知って勉強になった。これからは、感謝してご飯を食べたい」「教祖ご在世当時の田園風景を想像して、味わい深い体験ができた」との感想が聞かれた。
苗は、ここで15センチほどのしっかりとした苗になるまで育てられ、6月初旬には田植えが始まる。
(文=諸井道隆)
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