幸せへの四重奏 – 国際コンクール
元渕舞
ボロメーオ弦楽四重奏団ヴィオラ奏者
ニューイングランド音楽院教授
昨年12月の半ば、プリムローズ国際ヴィオラコンクールの審査員を務めるため、ロサンゼルスに1週間ほど滞在した。国際レベルのコンクール審査員は、私にとって今回初めての経験だ。世界中から呼ばれた7人の審査員と一日中、トップレベルの演奏を聴き、意見交換しながら票を入れる。
第1次のテープ審査を経て第2次審査に選ばれたのは24人。どんな曲を演奏するかも審査のうちに入るので、自分の個性を目いっぱい強調する曲を選んだ者、得意な曲で固めた者、自分に足りない分野に挑戦する曲を選んだ者など、色とりどりだ。数年前までニューイングランド音楽院で私の生徒だった二人も勝ち抜いてきていて、以前どこかの音楽祭で教えたことのある生徒などを合わせると、知らない演奏者はほとんどいなかった。
第3次審査に残るのは6人。審査員の意見交換も面白い。ある審査員が高得点を出した者が、他の審査員からは最低点をつけられることもしょっちゅうだった。審査の重点を個性に置くか、技術に置くか、音楽性に置くか。各審査員の経験もさまざまで、意見が分かれた。
このコンクールでは、最新の数学法で点をつけることになっていて、スタンフォード大学の数学教授が各審査員の出した数字の奥にある心情を読み取り、それを数字にして表す。すると驚いたことに、綺麗に採点が並び、審査員全員、納得のいく結果が出た。
決勝に残ったのは3人。ここまで来ると、トップスリーは全員一致で決まった。
決勝ではオーケストラと共演する。同じ曲でもソリストが変わると、これだけオーケストラの音が変わるのかと驚いた。結局、優勝したのは、オーケストラを一番生き生きと共演させた演奏者だった。お互いを尊敬し、双方を伸び伸びと自由に演奏させる力。これこそ室内楽の神髄だ。
「将来の夢は、プロのカルテットで演奏しながらトップの音楽院で教えることです」と語った彼女に栄光あれ。