台風13号の豪雨被災地へ出動 – リポート災救隊 福島・茨城・千葉の3教区隊
2023・10/4号を見る
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対応困難な現場で初動救援を任され
9月初旬、東海道沖で熱帯低気圧に変わった台風13号の影響により、関東甲信地方や東北地方の太平洋側で、8日から9日にかけて豪雨被害が発生。東京都の伊豆諸島をはじめ、福島、茨城、千葉の各県では「線状降水帯」が発生し、1時間に80㍉を超える大雨となり、土砂崩れや床上・床下浸水などの被害に見舞われた。こうしたなか、災害救援ひのきしん隊(=災救隊、橋本武長本部長)の福島・茨城・千葉の3教区隊は、社会福祉協議会(=社協)やボランティアセンターの要請を受け、各県の被災地へ出動。3教区隊は、現地のボランティアセンターが、一般ボランティアには対応が困難と判断した現場での初動救援を任され、民家などに流入した土砂の撤去や、水に浸かった家財道具の搬出などに力を尽くした。
被災者の心に寄り添い – 福島教区隊
8日夜、県内初の「線状降水帯」が発生した福島県いわき市では、九つの河川が越水し、1千200棟を超える住宅が床上浸水するなど甚大な被害に見舞われた。豪雨から1週間が経つなか、越水した河川沿いの住宅街には、浸水により動かせなくなった車や、泥だらけの家電製品や家具などの“災害ごみ”が散乱。豪雨被害の爪痕が深く残る市内各所で、懸命の復旧作業が続けられている。
福島教区隊(荒井弘徳隊長)は10日、荒井隊長(43歳・安達分教会長)と平澤勇一・福島教区長(64歳・磐城平大教会長)が被害状況を確認し、いわき市社協の職員らと今後の具体的な対応について協議。その後、市災害ボランティアセンターの要請を受け、12日から20日まで出動すると決定した。
初日の午前10時、宿営地の磐城平大教会で結隊式を実施。ボランティアセンターが「一般のボランティアには対応が難しい」と判断した現地へ出動し、水害に遭った家屋の復旧作業に取りかかった。
以後、同様の判断がなされた家屋へ連日赴き、初動の救援活動を続けた。
16日には、特に被害の大きかった内郷内町へ。町内を流れる宮川の越水により、高さ1メートルを超える水が民家へ押し寄せ、全住宅の半数ほどが浸水したという。
現場の一つ、70代の夫婦が暮らす民家で、隊員たちは“災害ごみ”の搬出に着手。前日の夜にも大雨が降ったため、足元がぬかるむなか、住人の要望を聞きながら、泥まみれになったタンスや冷蔵庫などの家財道具、水を吸って重くなった畳などを手際よく運び出していく。搬出した物品は、軽トラックで集積場へ運んだ。
住人の妻は「重たい家財道具を運び出すことができず、途方に暮れていた。災救隊の皆さんが、こちらの要望を細かく聞きながら、あっという間に片づけてくださった。本当にありがたい」と安堵の表情を見せた。
17日も引き続き、同町の複数の民家でごみの撤去や庭に流入した土砂の搬出を行った。
ボランティアセンターを総括する、いわき市社会福祉協議会事務局長の篠原洋貴さん(49歳)は、「災救隊の皆さんには、12年前の東日本大震災と4年前の豪雨の際も力を貸していただいた。これまで復興に向けて歩みを進めるなか、いまでは災救隊の存在を市の災害救援活動における“切り札”として位置づけており、全幅の信頼を寄せている。今回の豪雨被害では、一般のボランティアには対応が難しい現場で作業に従事してくださり、心から感謝している。これからも災救隊の皆さんと連携して、町の復旧活動に取り組んでいきたい」と話した。
荒井隊長は「過去の出動経験を生かし、迅速に対応することができた。被災された住民の中には、『一人で作業していると泣きそうになる』と話す人もいる。土砂などをきれいにするだけでなく、住民の話に耳を傾けるなど、被災によって憔悴した人たちの心に寄り添うことを大切にしている。これからも現地のニーズに応え、被災者が一日でも早く、元の生活に戻れるよう力を尽くしていきたい」と語った。
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なお、9日間で延べ168人が出動。同市内の15件の現場で、土砂や家財道具の搬出などに従事した。
隊員の“連携力”生かし – 茨城教区隊
記録的な豪雨となった茨城県では、「緊急安全確保」が発令された高萩市などで床上・床下浸水などの被害に見舞われた。
茨城教区隊(大竹清彦隊長)は12日、大竹隊長(51歳・河内分教会長)が、高萩市内に教会のある下山田酉松さん(65歳・髙萩分教会長)と共に現場の被災状況を確認。同市社協と今後の対応について相談を重ねた。
その後、災害ボランティアセンターの要請を受け、16日から同市下手綱地区へ出動。同地区では、関根川の越水により川沿いの多くの民家が浸水被害などに見舞われた。
このたびの出動では、一般ボランティアとは異なる現場を担当することに。当初は一般ボランティアと同じ作業をする予定だったが、ボランティアセンター内の会議で、4年前の豪雨災害時に災救隊が出動した同県大子町の社協職員から「災救隊に任せておけば間違いない」と助言があり、復旧作業が困難な現場を一手に任された。
18日、隊員たちは関根川から約100メートル離れた民家へ。住人の証言によると被災当日、床上30センチまで水が押し寄せ、1階の家財道具が使えなくなったほか、畑に大量の泥が流入したという。
気温32度を超え、乾いた砂埃が舞うなか、隊員たちは庭に流入した大量の土砂を手際よく撤去。また、家屋の床下に堆積した土砂をスコップで土嚢に詰め、一輪車で何度も屋外へ運び出した。
このほか、流木と“災害ごみ”などを分別し、軽トラックで集積場へ運搬した。
住人の80代男性は「床下に溜まった泥を出す難しい作業などを、快く引き受けてくださった。災救隊の皆さんの手際良い作業を見て、復旧作業の“プロフェッショナル”だと感じた。災害から1週間が経ち、体と心の疲労がピークに達していたので、本当に助かった」と謝辞を述べた。
大竹隊長は「日ごろの訓練などで培った隊員同士の“連携力”を存分に生かし、迅速かつ的確に復旧作業に取り組むことができたと思う」と話した。
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なお、8日間で延べ108人が出動し、13件の現場で被災家屋の復旧作業に従事した。
床上浸水の民家で実動 – 千葉教区隊
千葉県では8日、記録的な大雨となり、河川の氾濫や土砂崩れが相次いだ。
翌9日、齋藤芳徳・千葉教区隊隊長(58歳・徳道分教会長)が茂原市などの被災現場を視察。その際、茂原市社協に災救隊について説明した。
その後、13日に茂原市で災害ボランティアセンターが立ち上げられると、同市社協の要請を受け、同日から18日にかけて出動することを決めた。
期間中、延べ60人の隊員が床上浸水した民家13軒へ出動。残暑なおも厳しいなか、水に浸かった畳や家財道具の搬出、家屋内の清掃や消毒などを行った。
また、水害で流された倉庫の解体など、一般ボランティアが対応できない現場の作業を任された。
18日で出動に区切りをつけた後、23日にも社協の要請を受け、同市の民家へ。8人の隊員たちが家財道具の搬出などに従事した。
齋藤隊長は「復旧作業が困難な現場などで、被災された方々にとても喜んでいただけた。今後も被災者の心に寄り添う活動を心がけ、被災地のニーズに応えていく」と語った。
福島、茨城の両教区隊の救援活動の様子を視聴できます