音楽家の“原石”をプロデュースしたい 声楽家 花田千寿子さん – ようぼく百花
2023・10/4号を見る
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天理につながる若手音楽家を応援したい 。ソプラノ歌手として、これまで「おうた演奏会」や地域主催のコンサートに多数出演するなど、教内外のステージで美声を披露してきた花田千寿子さん(39歳・西海大教会教人)。現在、自ら立ち上げた音楽団体「てんり∞PLAYERS♪PROJECT∞」の代表として演奏会の機会を設け、将来の活躍を期待される音楽家の“原石”に発表の場を提供している。
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音楽が大好きだった祖母の影響で、幼いころから「将来は音楽の道へ進みたい」と思っていた花田さん。鼓笛活動に積極的に参加する一方、中学校では、当時全国レベルの実力を誇る合唱部に入った。
その中で歌の魅力に引き込まれた花田さんは、帝塚山学院高校音楽コースを経て、大阪音楽大学へ。声楽家による本格的な指導を受け、専門知識を学び、歌唱スキルを磨いた。
大学卒業後は、天理高校嘱託講師として合唱部の指導に携わる傍ら、地域のロビーコンサートに出演。「おうた演奏会」ではソリストを4度務めるなど、“お道の声楽家”として教内外の音楽活動に関わってきた。
「作詞者が一つひとつ吟味した“言葉”の意味を、歌を通じて自然に伝えることを求められるのが声楽の楽しさであり、難しさでもある」と話す花田さん。コンサートに臨む際は、技術の向上を図ることはもちろん、まずは歌詞を紡ぐ“言葉”そのものの意味を理解することを大切にしているという。
また、平成28年から令和3年にわたり、天理教音楽研究会合唱団のボイストレーナーを務めた。「歌に対する向き合い方は十人十色。一人ひとりの特徴を見極めたうえで、その人に合った声の出し方を教えることを意識してきた」
歌声披露の舞台を提供
花田さんは昨年、新型コロナウイルスに感染。呼吸困難やめまいなどの後遺症に半年近く悩まされた。
思うように歌うことができないもどかしさを感じるなか、転機が訪れる。今年5月、天理中学校コーラス部へ発声のアドバイザーとして赴くことになった。「部員たちの若さ溢れる歌声にすごく感動して、前を向いて進む勇気をもらった。これ以降、いまの自分に若手音楽家の力になれることはないかと考えるようになり、彼らに、歌声を披露する舞台をプロデュースするという新たな目標が生まれた」と振り返る。
こうして翌月、天理で頑張っている若手音楽家、なかでも歌手やピアニストをサポートすることなどを目的に、教友らと共に音楽団体「てんり∞PLAYERS♪PROJECT∞」を立ち上げた。
さらに8月には、団体の活動の第一歩として「Just Breath ミュージックフェスティバル」と銘打った演奏会を、天理市にある、なら歴史芸術文化村ホールで初めて開催した。
当日は多くの観客が詰めかけるなか、天理中学校コーラス部や声楽を志す天理高校生、教内の若手歌手やピアニストらがステージに立ち、日ごろの練習の成果を披露した。
数日後、コンサートに参加した天理高校の生徒が県内の独奏・独唱コンクールで金賞に輝くという一報が舞い込んだ。この報告を受け、「なんとも言えないうれしさが込み上げてきた」と、花田さんは指導者の喜びを語る。
「親神様が、コロナ感染という節を通じて、私自身を次のステップへ導いてくださったのだと思う。これからは、自身のさらなるスキルアップを目指すとともに、将来ある若者が〝先の楽しみ〟を持てるような活動を地道に続けていきたい」