地域における宗教施設のあり方とは
2023・11/29号を見る
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「むすびえ」主催のセミナーに教会長がパネリストとして登壇
NPO法人「こども食堂わかやま」の理事長を務める岡定紀・紀ノ川分教会長(50歳・和歌山市)が11月9日、東京・増上寺で開かれた一般向けセミナー「宗教施設におけるこども食堂と防災」(主催=認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ)にパネリストとして登壇。自身の取り組みをもとに、こども食堂の意義や宗教活動としての位置づけについて語った。
このセミナーは、宗教者や自治体関係者を対象に、宗教施設で「こども食堂」や防災活動に取り組む意義を学び、その普及と啓発を図るもの。
「むすびえ」(湯浅誠理事長)によると、2016年時点で全国に319カ所あった「こども食堂」の数は、22年には7,363カ所へと急増。その一方で、宗教法人が主体となって運営しているものは約200カ所に留まるという。
当日、会場の増上寺・慈雲閣には、宗教施設関係者をはじめ、市や社会福祉協議会(=社協)の職員ら約70人が集まった。
開会あいさつの後、作家の水野敬也氏が登壇。「こども食堂には現代の救いがある」と題して、自身とこども食堂との関わりについて語った。
続いて、一般社団法人地域情報共創センター顧問の稲場圭信氏(大阪大学大学院教授)が、「宗教施設における防災の取り組み――盲点となっているつながり」をテーマに講演した。
稲場氏は講演の中で、いま宗教施設が自治体から災害時避難所に指定されるケースが増えており、災害発生時に宗教団体が社協と連携して行う支援活動への信頼度には高いものがあると指摘。そのうえで、防災には、宗教団体が平時から自治体や社協などと連携し、ソーシャル・キャピタル(社会的資本)を醸成することが重要だと述べた。
宗教活動としての位置づけをめぐり
この後のパネルディスカッションでは、岡会長のほかに、一般社団法人ソーシャルテンプル副代表理事を務める渡辺光順氏と稲場氏が登場。湯浅理事長の司会のもと、各パネリストは自身の取り組みを紹介したうえで、こども食堂の意義や宗教施設の役割について意見交換した。
その中で、こども食堂の宗教活動としての位置づけについて問われた岡会長は、「まず、一市民として地域の課題に取り組んだ。宗教的意味づけは後だったが、活動を通して学んだことも多かった」と回答したうえで、「お供え物を子供たちに配るときなどに、その意味を伝えるのは宗教家としての大切な役割だと思う」と持論を述べた。
閉会後、湯浅理事長は「宗教者対象のセミナーは初めてだが、肯定的な意見を多く頂いた。古くから地域交流の場としての機能を果たしてきた宗教施設によるこども食堂は、地域の縁を、あらためてつなぐ取り組みだと思う。今後、宗教施設でこども食堂を始めるためのガイドブック作りにも取り組みたい」と話した。
コラム – 本教と「こども食堂」の関わり
本教では、2016年ごろから教会建物などを活用した「こども食堂」の開設・運営が始まった。19年には、教内で「こども食堂」を運営する人たちへ情報提供と相互の情報共有を目的に、天理教民生児童委員連盟内に「天理教こども食堂ネットワーク」が開設。23年時点で、同ネットワークに37カ所の教内施設が登録している。なお、同ネットワークの調べによると、22年時点で117カ所の教会で「こども食堂」が運営されている。
岡会長が運営する「おのみなとこども食堂」を取り上げた記事は下記URLから
https://doyusha.jp/jiho-plus/pdf/20231129_kinokawa.pdf