時報歌壇(2023年11月29日号) – 植田珠實 選
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おつとめの兄の形見のおふでさき兄がぐぐぐと近づいてくる
福山市 藤井光子
恋文のやうに幾度も読みかへす検診表に動悸波打つ
呉市 月原光政
おやさとの銀杏並木は陽をおほひ信号の青ひときは青し
橿原市 神谷和美
よすがにと財布に母の遺髪もて十年とふを吾は今ある
生駒市 栄島みちえ
どちらにも握られていたばあちゃんのぬくもり残る森永キャラメル
伊勢市 宇佐美正治
手を合わせ祈りに来るる人の数多ご守護いただく五時の目覚めに
八尾市 伏田和子
月次祭のお下り届けし隣家より泥つき薯の「おうつり」受くる
東村山市 加藤八重子
教会に避難の人と寄り合いて台風過ぎる長き長き夜
熊野市 福山久美子
岩肌の潮も灼けて固塩に能登百日の熱き荒磯
石川県 岩城康徳
それぞれにコキアの鉢が置かれあるマンション窓辺秋の陽に照る
高槻市 石田たまの
体温を超える暑さの街中をネクタイしめて子は行くらむか
宇部市 天野敬子
消え失せし精霊のごと立ち昇る積乱雲あり終戦記念日
所沢市 岡田陽一
我ひとり孤独に耐えて生きていく楽しきことを夢に見ながら
京都市 寺澤幸子
愛ではね家賃は払えないのよとふと母が言うしみじみと言う
高槻市 浜辺幸子
目を閉じると母の歌声流れ来る里に帰りしあの日の歌が
宇佐市 三好秋美
選者詠
もみぢ葉を踏むたび音のさみしくて
過ぎゆく年のため息かとも
【評】
藤井さん
グググ、このオノマトペ!おふでさきを題材にした秀歌です。
月原さん
恋文と検診表、妙なる取り合わせです。確かにドキドキしますね。
神谷さん
この秋も天理の町がイチョウの黄金色に染め上がりました。下句で色がいっそう鮮やかに浮かびました。
新年号は、12月4日までの到着分から選歌。投稿は新年に関する短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号「時報歌壇」係
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