特集「お道の里親活動の歩み」-「人の子を預かって育てる」おたすけ連綿と
2023・12/13号を見る
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全国の委託児童数の10% 770人を本教の里親が養育
本教の児童福祉活動の原点には、教祖の「人の子を預かって育ててやる程の大きなたすけはない」とのお言葉がある。
また、明治43年の天理教養徳院(現・天理養徳院)開設に当たり、中山眞之亮・初代真柱様は「人の子も我子もおなしこゝろもて おふしたててよこのみちの人」との歌を詠まれ、同院の使命と子供の育成に携わる者の心構えをお諭しになった。
各地の教会では、日本国内の里親制度が整備される以前から、寄辺のない家族や子供たちを積極的に受け入れてきた。
「おたすけ」という基本精神がある
昭和23年に里親が制度化されて以降、全国的に里親の数は一時増加したが、その後は減少傾向が続いた。こうしたなか、教内の里親活動のさらなる充実を目指し、56年、宗教団体として初となる「天理教里親会」を発足(設立時の会員は341人)。58年、現在の名称へと改めた。
以後、研修会や「里親サロン」の開催、機関誌『さとおや』の発行などを通じて、教内の里親の開拓と資質向上を図ってきた。
天理時報では、平成19年から2年余り、計18回にわたって「シリーズルポ『里親の現場から』」を連載。各地の教会などで里子を預かる教友の姿を紹介したところ、大きな反響があった。
22年、第56回「全国里親大会(奈良県大会)」が初めて親里で開催。同年、天理教養徳院の開設に始まる”お道の福祉活動”が100年の節目を迎えるなか、時報のシリーズルポをまとめた単行本『”たましいの家族”の物語』を道友社から刊行。併せて記念シンポジウムも開催された。
シンポジウムに出席したノンフィクション・ライターの村田和木氏は、天理教の里親活動の特長について天理時報へ寄稿する中で、「『おたすけ』という基本精神がある」ことを指摘。さらに、里子が「信仰をもとに”心の拠り所”を学ぶ」ことなども挙げ、「もちろん強制はいけないが、信仰を通して、人としての生き方――たとえば、たすけ合いの大切さ、役に立つことの喜び、そして善悪の基準を学ぶのは大事なことだと、私は思う」と述べている。
現在、同連盟の会員数は650世帯。29教区に里親会が結成され、全国の委託児童数の約10㌫に当たる770人の子供を養育している。
また同連盟では、近年、お道の里親のための養育法を求める声が多いことから、TFA(天理教ファミリーコミュニケーションアプローチ)を考案。虐待を未然に防ぐ取り組みとして、教内外への普及を目指している。
元里子の男性 教会長に就任
お道の里親に育てられたことをきっかけに、自ら信仰を求め、教会長になった男性がいる。
守屋元也さん(53歳・乙長分教会長・岡山県倉敷市)は15歳のとき、児童養護施設から赤澤時雄さん(故人・乙長分教会前会長)の元に預けられた。
教会で暮らし始めて1年ほど経ったある日。事件を起こして警察のお世話になった守屋さんを、赤澤さんが身元引受人として迎えに行った。
その際、赤澤さんは守屋さんを叱るどころか、教会に戻って神殿で深々と参拝すると、「お腹、空いたろう」と言って食事を出して労わり、いつも通り優しく接したという。
このことをきっかけに、自然と「心が切り替わっていった」という守屋さん。以来、赤澤さん夫妻に苦労をかけないよう、少しずつ生活を改善していった。
高校卒業後、就職した守屋さんは、25歳のころ、教会を離れて働いていた。しかし、八方塞がりの状況になり、赤澤さんに助けを求めたところ、修養科を勧められた。このとき、「お世話になった赤澤さん夫妻の思いに沿おう」と修養科を志願した。
親里で修養生活を送る中で、「乾いた心に染み込むように教えを理解することができた」と振り返る守屋さん。お道の素晴らしさにあらためて気づき、修了後、自ら教会につながるようになった。
その後、「布教の家」や上級教会の住み込み青年などを経て、21年前、赤澤さんの後を継ぎ、教会長の理のお許しを戴いた。自身が育ててもらった恩返しをしたいとの思いから、14年前に里親登録。これまで10人の子供の委託を受け、現在、3人の里子を養育している。
また、岡山教区里親会会長に就くとともに、TFAの講師も務め、里親活動の推進に積極的に努めている。
守屋さんは「昔の自分から想像もできないが、いま教会長として、里親として精いっぱいつとめている。教祖140年祭の旬に、一人でも多くの子供をたすけられるよう、周囲の教会長らに里親登録を呼びかけ、”たすけの渦”を起こしていきたい」と語った。
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梅原啓次・連盟委員長(70歳・大啓分教会前会長)は「歴代委員長や委員、会員の方々の並々ならぬご尽力があって、里親活動は今日まで続いてきた。社会のニーズに応えるこの取り組みは、おたすけの一つだと思う。教祖140年祭に向けて、さらに教祖にお喜びいただけるように力を尽くしていきたい」と話した。