“天理柔道”の師範と教え子 米国代表として国際大会へ – 話題を追って
2024・1/24号を見る
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ロスアンゼルス天理道場
“天理柔道”の師範と教え子が米国代表として国際大会に出場――。2023年12月、東京体育館で行われた柔道の国際大会「グランドスラム東京2023」に、アメリカ伝道庁(深谷洋庁長)が運営する「ロスアンゼルス天理道場」の師範を務める髙橋徳三さん(47歳・北開分教会ようぼく)と教え子の2選手が、男子100キロ級と同100キロ超級にそろって出場した。
髙橋さんは北海道函館市にある教会で生まれた。7歳のとき、地元の道場へ通い始め、「強い選手になりたい」と、天理高校から天理大学へ進学。めきめきと頭角を現し、国内の大会で活躍した。
2007年、新日本製鐵柔道部(当時)に在籍していた髙橋さんは、天理大学柔道部OB会の席上、天理大学柔道部師範の細川伸二さんが、ロスアンゼルス天理道場の師範の後任を探していると耳にし、その場で「私が行くことは可能ですか?」と申し出た。現役選手として活躍していたため、関係者から引き留められたが、父親から後日「教会の初代会長も、北海道へ単独布教に行く際、周りの人から引き留められた」と聞き、初代会長の姿と現在の自分を重ねて渡米を決めたという。
「生徒の模範になる」を心がけ
翌8年からロスアンゼルス天理道場で指導に当たり、柔道に取り組む姿勢をはじめ、生活態度や礼儀など、「自らが生徒の模範になること」を心がけた。これは、高校時代の恩師である加藤秀雄氏(元天理高校柔道部監督)の著書『火・水・風――天理高校柔道部のこころ』の影響だという。
指導を続ける傍ら、選手として米国内の大会に出場。「全米柔道体重別選手権」では、北京五輪金メダリストの石井慧選手を破って優勝するなど、無差別級を8度も制した。
19年に現役引退。「現役時代の目標は、オリンピック3連覇の野村忠宏先輩のように、世界で活躍して天理柔道の素晴らしさを広めること。アメリカでの日々は、天理柔道に学んだ試合への取り組み方などを、自身の姿を通して道場生に見せたい思いもあったが、もう十分かなと思った」と当時を振り返る。
その後、父の背中を追って柔道を習う息子たちが、将来のアメリカ代表を目指す可能性を考え、21年に市民権を取得。このとき、自身も柔道のアメリカ代表になる権利があることを知り、現役復帰を決めた。
再びトレーニングを重ね、昨年4月の全米選手権で3位入賞を果たし、米国の強化選手入り。7月のパンアメリカン選手権で5位に入って国際柔道連盟のランキングに名を連ね、グランドスラム東京への出場権を得た。
教え子と“ダブル出場”果たす
迎えた大会では初戦に勝利した後、3回戦で敗れたものの、ベテランならではの巧みな技で健闘した。
さらに今大会では、ロスアンゼルス天理道場に所属する、教え子のフィリップ堀内選手(30歳)も男子100キロ超級に出場。教え子と共に“ダブル出場”を果たした。
大会前、二人は天理大学で調整練習を行い、本部神殿で参拝。堀内選手は滞在中、一人で神殿へ足を運ぶこともあったという。
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髙橋さんは「試合の緊張感や準備方法、現在の世界柔道のトレンドなど、この大会で感じたことはすべて、今後の指導に役立つものだった。この大舞台で戦うことができたのは、多くの人たちが支えてくださったおかげであり、無限の可能性を秘めた道場生たちに、将来への希望を与えることもできた。現役時代に抱いていた『天理柔道の素晴らしさを世に広める』という目標が、実現に向けて動きだしたように思う」と話した。