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母に見る幸せの在りか – 心に効くおはなし


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母は今年米寿を迎える。もともと家系的には女が短命であり、それゆえ信仰の道に入った芦田家の女性の歴史の中では、おそらく一番の長寿ではないかと思う。とはいえ、大腿骨を骨折したし、脳梗塞もやっている。足腰の関節も痛み、病名を付ければ幾つもあるだろう。それでも母は笑顔で楽しそうに暮らしている。

母は孫たちとは大の仲良しである。以前、長男が校則を破り茶髪にしたとき、私がケチョンケチョンにけなしていると母も近寄ってきて、「お前、その頭なぁ……」と言いかけた。よくぞ言ってくれました、と心の中でバンザイしていたら、なんと「ええわ。なかなか似合うてるで」とつづけたのである。なんてことを言うんだと思いながらも私は、母の物分かりの良さにあきれもし感心もしたのだった。

母に接する人たちはいつの間にか笑顔になっている。そして口を揃えて「お幸せですね」と言ってくださる。

母はワンマンな父の言うがままに通り、私を育て人のお世話をしてきた。どこに行楽に行くでもなし、おいしいご馳走を食べるわけでもなく、何か言われたら「すまんなぁ、すまんなぁ」といつも頭を下げ、みんなに負けて通ってきた。愚痴も不足も言わないで、おやさまのお好きな“低い、やさしい、素直な心”そのままに今日まで生かしていただいてきた。

人の幸せとはなんだろう。母を見ていて考えさせられる。

『絆 ki・zu・na』

芦田京子著(天理教芝白金分教会長夫人)
※肩書は刊行時

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