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花のような芳香を兼ね備えた人柄に


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家の前で秋風に吹かれていると、今年もお向かいから金木犀の香りが漂ってきました。金木犀の花は、ほのかに匂うというより、まるで香りに輪郭があるかのようにくっきりと匂います。

「あ、トイレの匂いだ」。自転車に乗った女子中学生が、明るい笑い声とともに通り過ぎていきます。「おいおい、真似をしたのは芳香剤のほうだろ」と、思わずツッコミを入れそうになりました。

匂いと記憶は密接につながっています。塩素の匂いからプールの授業を思い出したり、特定の香水から、それを愛用していた人を思い出したり。こうした現象は「プルースト効果」と呼ばれ、五感のうち嗅覚だけが、脳の感情や本能を司る部分に直接つながっているためといわれています。

人柄も香りに似ています。親しくなって距離が近づけば近づくほど、はっきりと相手に伝わります。「金木犀のような芳香を兼ね備えた人柄になりたいものだ」。そう思いながら、秋の香りを胸いっぱいに吸い込みました。

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