時報俳壇(2023年11月29日号) – ふじもとよしこ 選
2023・11/29号を見る
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燈台を照らす良夜となりにけり
鳥取県 野間田芳恵
直角に水を切り分け新豆腐
近江八幡市 若林白扇
卓上に一つ逃げ出す衣被
東京都 吉田柳哲
北へ行く夜汽車発つ間の走り蕎麦
札幌市 田森つとむ
秋澄めり神名流しの声弾む
奈良県 松村ヒロ子
その中は河童の国や芋の露
愛媛県 中山富貴
秋灯下視力無く閉ず刻の飢え
秋田市 高橋重雄
安寧と五穀豊穣秋祭
福岡市 山口騰水
風止んで何処にありや金木犀
天理市 北をさむ
行き過ぎて戻りたくなる金木犀
豊川市 菊地美智代
いわし雲まつだいの道滔々と
東京都 大矢典子
初席の友と下り立つ星月夜
千葉県 新江堯子
空き缶がカラカラ鳴って野分中
滝川市 加納千世子
おさづけの取次数多秋大祭
二戸市 高屋敷節子
一言の種まきするや秋時雨
宇治市 原 清彦
名月や兄の形見の筆をとり
江別市 杉山忠和
子の叫ぶ恐竜の名の秋の雲
今治市 仙波絹子
微酔いて朝にそよぐや芙蓉花
和歌山市 西澤喜久治
ほのかなる香の手水舎に萩の風
大津市 平井紀夫
賑わいし夕餉もありぬ秋刀魚五尾
市川市 小松富子
夕べには萎む朝顔咲きのぼる
浜松市 鈴木和加恵
大祭のハッピの波や金木犀
小千谷市 村山克枝
朝まだき三五の月に驚きぬ
名古屋市 伊園三郎
母逝きて秋の七草ひとり見る
横浜市 及川秀代
寝苦しさ何処に消えたか虫時雨
北九州市 石井喜代美
明け方の濃くて淋しい霧の立つ
津山市 工藤圭志
地場に立つ帰参者多し雁渡る
宇治市 原 智夫
選者詠
御嶽の山より暮るる蕎麦の花
【評】
野間田さん
広く海上を照らす燈台。良夜に名月が灯台を照らしています。互いに交信しているかのようですね。
若林さん
季語の新豆腐は、新大豆で山水を使い甘い風味があります。一丁ずつに切り分ける表現、水を切り分けが、季語に効を奏しています。
吉田さん
衣被とは、里芋の子を皮のまま茹でたもの。皮を剥いていると手から滑り落ちてしまったのです。食事時の温かな雰囲気を感じます。
新年号は、12月4日までの到着分から選句。投稿は新年に関する俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号「時報俳壇」係
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