天理教点字文庫の点訳・音訳ひのきしん者4氏が表彰 – 社会福祉課
2023・11/22号を見る
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布教部社会福祉課所管の「天理教点字文庫」で点訳および音訳のひのきしんに勤しむようぼく4氏が9日、日本盲人社会福祉施設協議会の創立70周年を記念する第71回「全国盲人福祉施設大会」の席上、表彰を受けた。
中途失明者の学びの環境つくり
特別永年勤続職員表彰
天理の山崎 浩さん
山崎浩さん(76歳・本部直属天元分教会ようぼく・天理市)は、本部勤務者として長年にわたり点訳指導および点字本校正に携わった功績から「特別永年勤続職員表彰」を受けた。
昭和44年、自動車整備士の仕事をしていた山崎さんは、視力に異常を感じたため一時休職。やがて中途失明したが、知人の紹介で当時の布教部布教三課(現・社会福祉課)所管の「点字研究室」(現・天理教点字文庫)で点字を習い始めた。
3カ月ほどで点字を概ね身に付けた山崎さんは、45年から点訳ひのきしんに携わるように。翌年の「天理教点字文庫」の発足に合わせ、本部勤務者としておぢばでの伏せ込みを始めた。
以来50年以上にわたり、教内の点訳講習会や福祉専門学校などで点訳指導に携わってきた。これまで活動を続けてきたのは、中途失明で苦労した経験から、少しでも当事者が学びやすい環境をつくりたいとの思いがあったからだという。
山崎さんは「校正では誤字脱字を一字も見逃さないよう、慎重に進めることを心がけている。点訳の本を作るには、制作に携わる人が当事者の視点に立つことが必要不可欠。そうした心構えを伝えることも大切にしながら、これからも点訳を続けていきたい」と話した。
“声のおたすけ”続けて半世紀
特別奉仕活動者表彰
天理の土田美奈子さん
土田美奈子さん(80歳・秋一分教会教人・天理市)は、音訳者および音訳指導者として長年貢献してきた功績により、「特別奉仕活動者(ボランティア)表彰」を受けた。
音訳ひのきしんを始めたのは昭和49年。管内高校の国語教師を務めるなか、「人の役に立つことがしたい」と思った土田さんは、福祉課(当時)所管の「朗読ひのきしん」(現・音訳ひのきしん)の存在を知り、「自分がやるべきことはこれだ」と確信したという。
以後、同課で音訳の基礎を学び、53年から「声の図書室」(現・音訳研究室)の室員として『天理時報』『みちのとも』などの教内紙誌や書籍の音訳に従事。平成18年から7年かけて「おさしづ」の音訳を完成させるなど、半世紀にわたり、声を吹き込んできた。その傍ら、教内の音訳講習会で講師を務めるなど、後進の育成にも力を注いでいる。
土田さんは「これまで続けられたのは、夫はもとより、ひのきしんに励む仲間やリスナーの方々、周囲の人々が支えてくださったおかげ。これからも『無理なく精いっぱい』をモットーに“声のおたすけ”に努めたい」と語った。
「自分が楽しむ」モットーに指導
特別奉仕活動者表彰
愛知の水谷吉文さん
水谷吉文さん(68歳・金城西分教会長・稲沢市)は、37年にわたり点訳指導者として務めた功績が認められ、「特別奉仕活動者(ボランティア)表彰」を受けた。
昭和54年、本部勤務者として、福祉課で点字を習うように。翌年「天理教点字文庫」で点字の指導を始めた。指導者としてのモットーは「まずは自分が楽しんで取り組む」こと。
63年に勤務を終えた後も、同文庫の点字研究室員として活動。平成9年から日本点字委員会委員、昨年から同文庫点字研究室主任を務めている。
水谷さんは「点訳に携わる中で、点字と日本語の双方の面白さを知ることができ、自身の成長にもつながった。目の不自由な人の読書環境がさらに良いものになるよう、今後も尽力したい」と述べた。
「人たすけたら」の教えを胸に
奉仕活動者表彰
天理の武谷亮子さん
武谷亮子さん(65歳・教会本部ようぼく・天理市)は、17年にわたり図書や雑誌の音訳に尽力した功績から、「奉仕活動者(ボランティア)表彰」を受けた。
平成18年、天理市主催の音訳ボランティア講座を受講した折、講師を務めていた「天理教点字文庫」の関係者に声をかけられ、同文庫で音訳ひのきしんに携わるように。
以後、教内の雑誌や書籍の音訳に従事。22年に点字文庫音訳者に認定され、27年から同文庫音訳指導者として「音訳ひのきしん者養成講習会」の講師を務めている。
武谷さんは「『人たすけたらわが身たすかる』の教えを胸に、音訳を通じて人さまのお役に立てることを願ってきた。これからも真摯にひのきしんに取り組み、利用者に喜んでもらいたい」と話した。
コラム – 天理教点字文庫の歩み
本教の視覚障害者への支援は大正14(1925)年、中山正善・二代真柱様が奈良県立盲学校の前身である私立奈良盲唖学校の校主に就かれたことを嚆矢とする。
点訳活動は昭和24(1949)年、布教部指導課(当時)が点字版「みかぐらうた」の制作を手がけたのが始まり。28年に「点字本製作講習会」が開かれて以降、ようぼく・信者によるひのきしんで点訳が行われるようになった。その後、35年に布教部内に「点字研究室」、42年には録音物を製作する「声の図書室」が設置。46年には教内外を問わず誰もが利用できる、点字書と録音物の図書館として「天理教点字文庫」が開設された。
同文庫では、原典や教内書をはじめ、一般書の点字書・録音物の製作や貸し出しを行う。現在、点字図書約1万8000冊、録音図書約1万1000巻、デイジー図書(デジタル録音図書の国際標準規格)約3700枚を収蔵している。