見栄や体裁に気を取られ – 道を楽しむ15
2023・11/22号を見る
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今年9月、大教会長の随行として南米ブラジルへ出向いたときのこと。出発の数日前に左膝に違和感を覚えた。1年前に痛めて以来、しばしば関節痛に見舞われ、そのたびに痛み止めの注射を打っていたが、この違和感は経験的に痛みの前兆だった。しかし病院へ行く間もなく、そのまま日本を発つことに。
悪い予感は当たった。ブラジル滞在3日目、左膝が痛みだす。随行員が足手まといになっては申し訳ないと、周囲に気づかれぬよう振る舞うのだが、痛みに堪えきれず鎮痛剤を買い求めた。それは見たことのない大きさで、効果は抜群なのだが、説明書には連続10日以上の服用禁止とあった。巡教はまだ10日以上ある。言い知れぬ不安が胸をよぎった。鎮痛剤で痛みは治まるが、曲げると圧迫感と鈍痛で正座ができない。しかし、ここは海外!教会の参拝場をはじめ、すべてが椅子。正座の機会が全くないのが幸いした。
巡教の主目的、部属教会の月次祭の日を迎えた。祭典の朝、前日から来ていた布教所長夫人が、左膝にサポーターを着けた私に気づいて、おさづけを取り次いでくださった。その後、まだ鎮痛剤をのんでいないのに不思議と痛みが感じられず、その日は服用しないことにした。
祭典が始まり、大教会長と共に神殿へ案内される。その際に、地方を勤めるよう頼まれ、快くお受けしたが、神殿に入って絶句した。地方だけが椅子ではなく円座だった。いまさら正座ができないと言う間もなく、困惑しながら地方の位置へ。ダメもとで恐る恐る正座をしてみる。すると、痛むどころか抵抗なく座れた。滞りなく地方を勤めるなか、朝のおさづけのおかげと思い、目頭が熱くなった。
祭典後、件のご夫人に事の次第を話すと、「おさづけを取り次いだんですから当然よ。私たち、もっともっとおさづけを取り次がなきゃ。そうでないと教祖、残念に思われますよ!」と。
全くその通りだ。なぜ、もっと早くにおさづけを取り次いでもらわなかったのか。見栄や体裁に気を取られ、本当に大切なことを見失っていた心得違いが実に恥ずかしかった。教祖にご安心いただき、お喜びいただくためにも、なお一層おさづけを取り次ぎ、一方で遠慮なく素直に取り次いでもらわねば。
中田祥浩 花巻分教会長