イラン戦争は何を遺したのか – 手嶋龍一のグローバルアイ 57
2026・6/24号を見る
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幾多の市民を犠牲にし、世界経済に痛打を浴びせたイラン戦争は遂に終わろうとしている。米国とイランは、停戦を謳った「覚書」に合意し、6月19日にスイスで署名の式典を行うことが決まった。米国のトランプ大統領は「世界の船はエンジンを始動し、石油を供給せよ」とSNSに書き込み、石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡は通行料なしで開放され、米海軍も封鎖を即刻解くことを明らかにした。イランが保有する高濃縮ウランの濃度をどのように引き下げるか。凍結されているイランの対外資産をいくら返還するのか。今回の「覚書」を基に今後の交渉でどう扱われるかが焦点となるだろう。
米国・イスラエル両軍は開戦の劈頭でイランの最高指導者ハメネイ師を殺害し、イスラエル軍は隣国レバノンの武装組織ヒズボラに猛攻を加えたことで戦闘は100日を超えて長引いた。だが、今回の停戦合意でもイランが支援するヒズボラやフーシ派の武装組織と恒久的な停戦が実現するのか先行きは楽観を許さない。
米国・イスラエルとイランの戦争は、ホルムズ海峡の二重封鎖で原油価格の高騰を招きながら、いったい何を達成したというのだろう。トランプ氏はオバマ民主党政権がイランと交わした「核合意」を破棄し、イランの核の脅威を除くとして、イラン攻撃に突き進んだ。だが、大山鳴動して鼠一匹、結果は「オバマ合意」とさして変わらない。イランの凍結資産も解除し、4兆円規模の金額を返還する見通しだという。
その一方で、“トランプ・ネタニヤフの戦争”を機に大西洋と太平洋に深い亀裂を生じさせ、米国を盟主とする西側同盟は大きく変質してしまった。トランプ氏率いる米国は“ドンロー主義”を掲げて南北アメリカに引きこもりつつある。それは台湾海峡と朝鮮半島に有事の芽を抱える日本など東アジアにとっては、“米国の不在”を意味している。中国・ロシア・北朝鮮は、これを好機とみなして攻勢を強めつつある。ニッポンの指導者は、米国のプレゼンスが薄まりゆく東アジアの安全保障にどう取り組もうとしているのか。ポスト・イラン戦争を見据えた戦略は輪郭がぼやけたままだ。










