元不登校の学生スタッフが世界に – 陽のあたる方へ 8
2024・12/18号を見る
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私どもの「こども食堂」では、大学生や専門学生、大学院生をスタッフとして1年間受け入れる「学生インターンシップ制度」を独自に設けています。これは「こども食堂」の活動を“仕事”と捉え、就業体験を通じて、子供に関わる仕事や社会への理解を深めることを目的としています。ボランティアではなく、〝仕事〟として活動に参加することで、自身の社会参加(貢献)への意識が高まり、子供への関わり方をより学ぶことができる機会となります。
今年度も、教育、看護・医療、心理学、社会福祉、経営学を専攻し、教育職や臨床心理士、看護師、福祉分野での活躍を目指す5人の学生が、インターン生として「こども食堂」の企画や運営に関わっています。秋と春には活動成果の発表会を開き、活動への思いや成果、課題、抱負などを語る機会を設けています。
先日の発表会には、米国シリコンバレーの大学に数カ月留学中のインターン生がオンラインで参加してくれました。彼は中学時代、ずっと不登校で、通信制の高校に入学。高校1年生から私どもの「こども食堂」でボランティアを始めると、ここが心の拠り所になり、不登校だったことを感じさせないほど活発に取り組むように。10人以上の級友をボランティアに誘い、大学入学後はインターン生として活動の中核を担っています。
彼は発表の中で、つらかった過去を見つめ直し、「こども食堂」でさまざまな子供たちやボランティアと関わる中で、心の向きが変わり、自分の役割を自覚したと、これまでの活動を振り返ります。以前に、癇癪持ちで自己中心的な小学生男子が彼と出会ったことで、人のことを思いやれるようになったことがありました。
発表の最後に、彼は「人を育てることで自分も成長できた」と強調します。そして、恩返しの心で人を助ける教育に関わりたい、将来自分の学校をつくるために来春から世界の学校を巡って教育を学びたい、と抱負を語ってくれました。
「こども食堂」の醍醐味は、人の人生が変わることにあると感じます。これからも、世界へ飛び立っていく学生を応援したいと思います。
乾 直樹(京都大学大学院特定教授・大阪分教会正純布教所長後継者)