あらきとうりようの精神を胸に“地球の反対側”で神名を響かせ – ブラジル青年会
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現地リポート ブラジル青年会布教キャラバン隊
荒道を切り拓く「あらきとうりよう」として、教祖の教えを伝え広めたい――。ブラジル青年会(木村エルトン正教委員長)は先ごろ、第58次「布教キャラバン隊」を結成。7月9日から15日にかけて、サンパウロ州サンカルロス市を拠点に、にをいがけ・おたすけ活動を展開した。ここでは、青年会本部委員として同隊に参加した天理時報記者が、遠い南米の地で教祖の教えを伝えようと「荒道開拓」の先頭に立って実動する青年会員たちの様子をリポートする。
「よろづよのせかい一れつみはらせど むねのわかりたものはない」
日本から約1万8000キロ、地球の反対側に位置する南米ブラジル。7月上旬の青く澄みわたった秋空のもと、5人の青年会員が声高らかに神名を流す。サンカルロス市内の道行く人々から向けられる“不思議そうなまなざし”も気にかけず、隊員たちの表情は晴れやかだった。
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ブラジル青年会の布教キャラバン隊は、1970年に第1次隊を結成。以来、年に1、2回結成され、「荒道開拓」をモットーに、にをいがけ・おたすけに取り組んでいる。
当初は国内で活動していたが、84年に隣国のアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアなどでも実施。2000年には海を渡り、ポルトガルへ。11年にはアフリカ・モザンビークへ赴くなど、国外でも積極的な布教活動を展開してきた。20年、新型コロナウイルスの蔓延により活動中止を余儀なくされたが、感染状況が落ち着いた今年1月、約3年ぶりに再開した。
布教中の“小さな衝突”も
同青年会は7月8日、ブラジル伝道庁(村田薫庁長・バウルー市)で第68回「ブラジル青年会総会」を開催、約120人の会員らが参集した。
翌9日は伝道庁の月次祭。祭典終了後、キャラバン隊に参加する5人のメンバーが顔を合わせた。自教会で青年づとめをしている人、会社で働く人、自身の事情の治まりを願って参加した人など、メンバーの立場はさまざまだ。
一方、一同の表情には布教への意気込みがあふれている。日本と文化が全く異なる地で布教に臨むことに緊張していた記者だったが、これから始まる日々に期待が膨らんだ。
親神様・教祖に出発のあいさつを済ませたキャラバン隊一行は、多くの教友たちに見送られて出発。伝道庁のあるバウルー市から約150キロ離れた、本教の布教拠点のないサンカルロス市へ向かった。
実動初日の10日午前8時30分、宿営地を出発した一行は、神名を流しながら同市の中心地へ。商店街前の大きな広場で、全員で「よろづよ八首」を唱和した。温かい陽光を浴びながら、心を込めてお歌を唱える。終了と同時に、広場にいた人々から拍手が湧き起こった。予想外の反応に驚きながら、続いてチラシ配りを開始。ポルトガル語のできない記者は、現地隊員に同行してもらう。
「ボンジーア!」
あいさつをしながらチラシを配っていく。「ブラジルの人は、どんな反応を示すのだろう」。そんな記者の思いとは裏腹に、多くの人々が快くチラシを受け取り、身上を抱えた人におさづけの取り次ぎを申し出たところ、その場で受けてくださった。
国民のほとんどがカトリック教徒というブラジルでは、宗教に対する人々の理解は深い。初めて名を聞く本教にも、関心を示す例は少なくない。しかし布教中には、信仰に篤いがゆえに”小さな衝突”の場面も見られた。
隊員の一人、平井ネルソン栄一郎さん(36歳・国名大教会ようぼく)は、声をかけた人から一方的に問い詰められた。相手はカトリック教徒で、お道の教えに言いがかりをつけている様子。それでも平井さんは冷静に対応し、最後まで相手の話に耳を傾けたうえで丁寧に教えを伝えた。すると、本教の教えや布教の目的を理解したのか、最後は笑顔を見せて別れた。
普段は高校教師として物理を教えながら、同青年会の委員を務めている平井さん。今回、長期休暇を利用して参加した。
「もともとは気の短い性格だったが、青年会活動を通じて信仰を深める中で、自らの癖性分に気づき、少しずつだが、ほこりの心づかいを改めることができるようになってきたと思う。いまの自分があるのは信仰のおかげ。お道の素晴らしさを少しでも伝えられれば」
そう話す平井さんは、笑顔でチラシ配りを再開した。
仲間と語らい信仰を培う
午後は、市内のシダーデ・アラシという町へ移動し、住宅街での戸別訪問に。
貧困層が多く住むこの町では、病気に罹っても病院へ行けない人が多く、実動中、病を抱えた人、アルコール依存症の人、家族が薬物依存に陥っている人など、さまざまな”難渋”を抱えた人たちと出会った。
隊員の一人は、「おたすけの気持ちを胸に歩いているが、現実には、私たちに直接できることは何もない。おさづけを取り次がせていただき、おつとめでたすかりを願うことしかできない」と語る。
記者自身も、たすけ一条の道であるつとめとさづけを教祖が教えてくださったことへの有り難さ、そして私たちが人のたすかりを願うことの大切さを、あらためて痛感した。
午後5時半ごろ、宿営地へ戻った一行は、夕づとめに続いて、実動中におさづけを取り次いだ人のたすかりを願って、全員でお願いづとめを勤めた。
布教キャラバン隊は、仲間との共同生活を通じて信仰を培えるのも大きな魅力の一つだ。一日の最後に設けられたねりあいの時間では、「信仰の喜びを感じたとき」「キャラバン隊で学んだこと」など、毎日異なるテーマに沿って、自らの生い立ちや身上をたすけられた経験など、思い思いに信仰談議に花を咲かせる。
「期間中、にをいがけ実動はもちろんだが、ねりあいの時間が特に印象に残った」
そう話すのは、今回初参加した田中ロドルフォ吉光さん(32歳・マリンガ教会教人)。田中さんは教会長子弟として生まれ、23歳のとき日本へ。天理教語学院で学んだのち、布教の家「大阪寮」、単独布教、本部海外部勤務などを経て昨年、帰国した。
日本での経験が自らの信仰の土台になっているという田中さんだが、ねりあいの時間では仲間との感覚の違いを感じたという。
「私自身が理想とする“実動の姿”を求め過ぎることもあったが、仲間それぞれの意見に耳を傾けて話し合う中で、信仰がより深まったように感じる。教会に戻ってからも、家族や信者さんをはじめ、日々、出会う人々の話をじっくり聞き、話し合うことを心がけたい」
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期間中、隊員たちは239人におさづけを取り次ぎ、約1500枚のリーフレットを配布した。
木村委員長(37歳・ジュッサラ教会長)は「布教キャラバン隊は、あらきとうりようとして、いまだお道の教えを知らない人々に教えを伝えるとともに、共同生活を通じて自らの信仰を培う場として、今日まで続けられてきた。来年は、第60次の節目となる布教キャラバン隊の結成を予定している。若い会員への丹精に力を入れ、次回は大勢の参加者で実動したい」と話した。
ブラジルの教友と布教に歩いたことで、記者自身も大きな刺激を受けた。真柱様は、第96回青年会総会の席上、「布教と求道、二つ一つとも言える荒道開拓の使命を身に行うことができるようになるということが、青年会員として最も大切」とお示しくださった。ブラジルの地でも、青年会の根幹である「布教と求道」を通じて、次代を担う人材が成人の道を歩んでいる――。教祖140年祭当日、ブラジルから帰ってくる教友に恥ずかしくない成人の道を、自らも歩みたい。
文=島村久生