変わらないために変わる – 視点
で見る
【AI音声対象記事】
スタンダードプランで視聴できます。
先日、空路の折に機内誌をめくっていると、ハッとする見出しが目にとまった。「変わらないために変わる」というのである。機内誌が典拠では甚だ説得力が薄いのだが、お許しを頂きたい。
その号では伊勢神宮の観光が特集されており、気になる見出しの後の興味深い記事をかいつまんで拝借すると、次のようになる。
「伊勢神宮へ参拝のリピーターは絶えないが、『なぜ人はリピートするのか』という問いかけに神宮の神職さん曰く、①2千年以上もの悠久の間、変わらぬ荘厳な佇まい、②繰り返されるお祭り(年間のお祭りの数はなんと1千500回を上回る)、③御礼やお守りを年ごとの節目で新たに受ける(お土産を買う日本人の風習に繋がっている)ことが時代を超えて人を惹きつける秘訣なのではないか。こうした、人々が繰り返し訪れる仕組みに加え、宿泊や飲食物の提供は神宮では行わず、周辺地域に富と繁栄をもたらすという、現在でいう『地域創生』を重視した考えかた。そこには持続可能なビジネスモデルとしても多くの学びがあるように思われる。『世のため、人のため』であることがサステナブルである必須条件ではないか。そしてもう一つ、神職さんから『変わらないために変わる』というお話。代表的なのは20年に一度、社殿を造り替える式年遷宮。この行事によって、古の建築技術や調度品を現在に伝えることができる。今でも『いつでも新しく』『いつまでも変わらない姿』を望むことができる」という。(『翼の王国』1月号、ANA編集部)
無論、伊勢神宮と私どもの教会とは、そもそも在りようが異なるのだが、それでも「変わらないために変わる」という言葉がどうしても気にかかる。大きく旋回しようとする時代の中で、大事なものを存続しようとするならば、面倒で手間のかかる「変わらないために変わる」という不断の努力が必要なのではないか。機内誌の記事に、背中を押される思いがした。
(橋本)