希望を育む医療めざして – 新連載 未来への第一歩 1
2026・6/10号を見る
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「先生、なぜ僕を助けたのですか。いっそのこと、死なせてくれたほうが良かったのに――」
研修医時代、脳卒中を発症した患者さんが救急搬送されたときのこと。担当医として容体を一晩中見守り、翌朝、ようやく意識が戻りました。安堵の声をかけた私に返ってきたのが、冒頭の言葉でした。この経験を通じて、「人が生きる」とは単に心臓が動き、呼吸が保たれている状態を指すのではなく、「心が活きる」ことが伴ってこそ意味を持つのだと痛感しました。
一昨年まで福岡県内のリハビリテーションセンターでセンター長を務め、脳機能の専門医として臨床に携わってきました。リハビリテーション医療とは、「失ったものを数えるのではなく、残されたものを喜びへと変えていく」ことに気づいていただけるよう支援する医療です。脳梗塞や頭部外傷などによって脳が損傷され、認知機能に障害が生じる「高次脳機能障害」をはじめとする、いわゆる“見えにくい障害”に苦しむ方々は、それまで当たり前にできていたことが突然できなくなった現実に直面し、生きる希望を失い、社会復帰を諦めかけてしまいます。そこで一人ひとりの能力や目標、QOL(生活の質)に応じた独自の“オーダーメードのリハビリテーションプログラム”を考案しました。
その核となるのは、お道の視点に基づく心の入れ替えにあると考えています。適切なリハビリテーションと心の向きの転換によって、障害があっても楽しく暮らせることを実感していただけると思うのです。
私自身も母の出直しや父の借金といった節に直面し、心を倒しかけたことがありました。そんななか、お道の教えをもとに心を入れ替え、先の楽しみを持って歩むことで、どれほど苦しい状況が続いても、親神様が結構にお導きくださると確信しました。信仰の有り難さを実感した経験です。
センターでは具体的な取り組みの一つとして、利用者による楽器演奏会を催しました。まひのない手足を使ってドラムなどを練習し、その成果を披露する場を設けることで、楽しさや達成感、新たな希望を育むことを目指しました。
自己実現を諦めずにリハビリテーションに取り組める環境を整えた結果、利用者の4割以上が社会復帰を果たしてきました。障害のある方が未来への第一歩を踏み出す姿を見ることは、私にとって何よりの喜びです。
永吉美砂子・西北分教会教人・リハビリテーションの専門医
永吉さんを取り上げた過去記事はこちら
https://doyusha.jp/jiho-plus/pdf/20260610_author-introduction.pdf








