天理時報オンライン

二上山の夕景と古人の悲しみ – 山の辺の道 心の景


撮影場所:天理市竹之内町
Photo by Hideharu

うつそみの人にあるわれや明日よりは 二上山を弟背とわが見む

(『万葉集』)

「この世に生きる私は、明日から二上山をわが弟と思って過ごすのでしょうか」

古来、神聖な山とされてきた二上山。冒頭は、この山に葬られた弟を悼む姉の歌だ。弟の名は大津皇子。天武天皇の第3皇子で優れた人物だったが、謀反の疑いを掛けられ自害。“悲劇の皇子”として歴史に名を残している。姉は大伯皇女。初代斎王として伊勢神宮で奉仕中に、弟の事件が起きた。

一説に謀反は虚偽で、皇太子・日並皇子の母である鸕野讚良皇后(持統天皇)の謀略とも。真実は分からない。この時代は資料が乏しく、謎はいつまでも謎のままだ。一つだけ確かなことがある。1991年、飛鳥池遺跡から「大伯皇女宮」と記された木簡が出土。この歌の主は実在し、飛鳥の都に住んでいた。写真左奥に見えるのが二上山。彼女も、この夕景を眺めただろうか。

(J)


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